食道癌治療の権威、Jari Rasanen医師(医学博士)が、プレシジョン医療の未来像を語ります。腫瘍ゲノムシークエンシングが個別化治療を実現するメカニズムを詳解。Jari Rasanen医師(医学博士)は、この手法により化学療法の効果が高まると指摘。これらの革新的技術は10年以内に臨床応用が進むと予測しています。
食道癌治療における精密医療とゲノムシークエンシング
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精密医療は未来の治療法
ヤリ・ラサーネン医学博士は、精密医療を食道癌治療の将来を担う鍵と位置づけています。このアプローチは画一的なモデルから脱却し、患者一人ひとりに高度に個別化された治療戦略の構築に焦点を当てます。
腫瘍ゲノムシークエンシングの役割
この新たなアプローチの重要な要素が、腫瘍ゲノムシークエンシングです。ラサーネン博士は、生検によって患者の腫瘍の完全な遺伝子地図を作成できると説明します。このゲノムデータは、最も効果的な初期治療を設計するための設計図となります。
個別化治療計画の作成
腫瘍内で特定された遺伝子変異は、治療計画に直接反映されます。ラサーネン博士は、術前補助療法(手術前治療)と術後補助療法(手術後治療)の両方が、この遺伝子地図に基づいて計画されると強調しています。このレベルの個別化こそが、精密医療の強みです。
化学療法プロトコルへの影響
精密医療は、食道腺癌に対する化学療法を根本から変えつつあります。現在、大多数の患者は組織型のみに基づき同一の抗がん剤(化学療法薬)を受けています。ラサーネン博士は、将来のプロトコルではゲノムデータを用いて個々の患者に最適な化学療法レジメンを選択し、治療効果を劇的に高められると述べています。
外科的治療の役割
腫瘍内科治療が進化する一方で、ラサーネン博士は外科的治療の役割は大きく変わらないと考えています。腫瘍の外科的切除は、限局性食道癌治療の基盤であり続けるでしょう。精密医療は外科的手技そのものを変えるのではなく、手術を支える内科的治療を強化します。
将来のタイムラインと期待
ラサーネン博士は、がん治療の近い将来に大きな期待を寄せています。今後10年以内に新たな発見と治療オプションが登場すると予測しており、これらの進歩が新たな機会を提供し、がん患者の転帰を著しく改善するとともに、個別化治療を標準的ケアとするだろうと述べています。
全文書き起こし
アントン・チトフ医学博士: ラサーネン教授、食道癌治療の未来はどのようなものになるとお考えですか?
ヤリ・ラサーネン医学博士: 鍵となるのは、いわゆる精密医療です。これは、患者の腫瘍のゲノム変異に基づいて、より適切に個別化された治療計画を立てることを意味します。
将来的には、腫瘍から生検を採取し、その遺伝子地図を作成するのが基本となるでしょう。その地図に基づいて初期治療を決定し、手術前後の治療も同様に遺伝子情報に沿って計画します。これにより、現在よりも医学的治療を効率化できるはずです。
アントン・チトフ医学博士: 腫瘍のゲノムシークエンシングが進むと、食道癌や肺癌に対する外科的手術の方法にも影響を与えると思われますか?
ヤリ・ラサーネン医学博士: 外科的治療そのものが変わるかどうかはわかりませんが、抗がん剤(化学療法薬)を用いた治療は確実に変化するでしょう。現状では、化学療法のプロトコルはほぼ全員同じです。
腫瘍の組織検査を行い、食道の腺癌と確認すれば、すべての患者が同じ化学療法を受けます。
しかし将来的には、当施設でも進めている研究のように、個々の患者に最適な化学療法を見極められるようになるでしょう。このような精密医療が、治療成績の向上につながる鍵だと考えています。
外科手術はほぼ同じままでしょう。この点については、非常に期待を持って将来を見ています。
今後の研究によって、さまざまながん種の治療に新たな選択肢がもたらされると期待できます。先ほども述べたように、個々のがん患者への個別化治療が将来のカギとなります。
その実現を心待ちにしています。そう遠くない将来に実現すると思っています。
今後10年で、がん患者に新たな可能性をもたらす画期的な発明を目にするでしょう。